新世紀GPXサイバーフォーミュラ マシンデザイン河森正治インタビュー記事


    世紀GPXサイバーフォーミュラ マシンデザイン河森正治インタビュー記事

『新世紀GPXサイバーフォーミュラ』で描かれるサイバーマシンたち。そのバックグラウンドには、マシンデザイン:河森正治氏のアイデアや知見が存分に注ぎ込まれている。サイバーマシンの世界観を端的に表しているのが、スーパーアスラーダ01のメカニカルイラストだろう。現実的なレーシングマシンの構造と、アニメーションならではのキャラクターデザインの魅力…、両者の融合した姿が凝縮されているのだ。はたして河森氏は、どのような思いでこのイラストを手掛けたのだろうか。その背景と『サイバーフォーミュラ』への思いをお聞きした。

メカニックデザイン 河森正治氏画像①

現実の車の構造を踏まえつつも
サイバーマシンを確立すること

まず、河森さんが描かれたこのスーパーアスラーダ01のメカニカルイラストのルーツを辿ってみると、1991年10月にアニメ雑誌(月刊ニュータイプ)の版権用として描かれた物でした。

河森:描いた記憶はあるのですが、1991年だったのは驚きました。シリーズのOVAが2000年代まで続いていたから、もっと後に描いたイメージがありますね。1991年の10月といえば、TVシリーズも放送中ですし、ちょうどスーパーアスラーダ01がオンエアに登場するタイミングだったんでしょうね。リアルタイムで内部図解を描いていたんだ…と思うと驚きます。

おっしゃる通り、こうしたメカニカルイラストは、放送後のサービス的に描かれるものという印象がありますね。アニメ用の設定を描かれた時点で、ある程度内部メカも構想されていたのでしょうか?

河森:そうですね。もともと乗り物の開発設計者になりたかったので、飛行機や宇宙船、車などの構造に関しては、ある程度構造は踏まえています。ただ、本物の強度計算や風洞実験をやっているわけではありませんから、アニメ的なディフォルメは加えています。

実在のフォーミュラカーを思わせつつも、サイバーマシンならではの構造が見えるのが面白いですね。

河森:そうですね。たとえばコクピットの後部からブーストへつながる部分のフレームに、丸いふくらみをつけてアクセントを加えているんです。こうすることで普通のフォーミュラマシンのシルエットと違うことがひと目でわかりますし、サイバーマシンであることを印象づけられるんです。

スーパーアスラーダ01ではV型12気筒エンジンが搭載されましたが、このイラストではエンジンの細部まで描かれていますね。1991年といえば、F1のマクラーレン ホンダ チームのマシンMP4/6が、V型12気筒エンジンを搭載したことでも話題となりました。

河森:その点はF1とリンクして考えていたと思います。振り返ってみると、1991年はエンジンパワーがすべてのレースマシンの能力を決めるような最後の時代でしたね。その時代以降のF1は、マシンのバランスが重視されますし、最大出力などの規制も多くなっていきましたから。

サイバーマシンは架空のメカではありますが、ここまで構造面に踏み込んで描けるのはなぜでしょうか?

河森:もともと父親が自動車の電装メーカーに務めていた関係で、メカニズムが身近にあったことは大きかったと思います。車のデザインで最初に衝撃を受けたのは、小学校2年生の時に知った、いすゞの117クーペですね。
その後、中学生になったとき、とてもかっこいい車に出会ったんです。あとをついていったらある自動車工場にたどり着いて。その車の名前を調べたら、デトマソ マングスタという車で、実は117クーペと同じジョルジェット・ジウジアーロ(イタリアのカーデザイナー)のデザインによるものでした。ここで「デザイン」という言葉の意味を、強く意識するようになったんです。

メカニックデザイン 河森正治氏画像②

不思議な体験でしたね。

河森:そこはシーサイドモータースというスーパーカー輸入会社のファクトリーだったんです。ラッキーだったのは、ショールームではなく、整備工場だったということですね。フェラーリ、ランボルギーニ、アストンマーチン等が整備を受けていたのですが、エンジンや内部構造を見ることができる機会なんて、工場でなければ不可能ですから。
当時は1970年代のスーパーカーブームが起こる前でしたから、中学生が見に来るなんて珍しかったんでしょう。なんでも見せてくれたし、「乗りに来るか?」って声をかけてもらえて。子どもの頃に、こういう体験をできたことはとても貴重だったと思います。

スーパーカーブームは、まさに車がヒーローとして扱われたムーブメントでしたね。不思議と子どもに人気の車種は、ランボルギーニ カウンタックやミウラ、ランチア ストラトスなど、マルチェロ・ガンディーニ(イタリアのカーデザイナー)のデザインが多かったと感じます。ジウジアーロのデザインはエレガントでしたが、ガンディーニのデザインは、キャラクター的な魅力に通じるものがあったのではないかと思えてきます。

河森:そうそう。ガンディーニのデザインには、天才的なキャラクター性があると感じます。これまでデザインというテーマで話すときに、デザインとスタイリングの違いや機能性、オリジナリティの話をしてきましたが、最近はキャラクター性が非常に重要だとあらためて気付いたんです。特に海外では、キャラクター性を表現できる人はとても少ないんですよ。そのなかでもガンディーニは、スタイリングがキャラクターになる臨界点を知っている方。スタイリングをキャラクターに昇華する能力が、抜群に高いとしか思えないですね。

車のキャラクター性という意味では、まさに『サイバーフォーミュラ』がもっとも重視されていたポイントですね。

河森:そうですね。『サイバーフォーミュラ』のデザインを進めるうえで徹底的に気を付けたのは、「キャラクターになるかどうか」という点でした。当時、F1ブームではありましたが、徐々に陰りが見え始めていました。その理由を自分なりに分析していくと、どの車も同じような形に見えてしまうことが大きかったと思えたんです。
70年代のF1は科学的な解析が弱かった反面、チームごとの独創性がありました。それがマシンの個性やキャラクター性につながっていたんです。特に『サイバーフォーミュラ』の初期段階の企画案では、低年齢層がターゲットだったこともあり、キャラクター性を際立たせることが大事だと思っていました。

車という題材についてはいかがですか?

河森:用途や機能・構造までを踏まえた「デザイン」と、外観を整える「スタイリング」が、ちょうど重なり合うところにある題材なので、車のデザインは非常に面白いんですよ。たとえば家電は、合理性を突き詰めているから、結局は似たような形になってしまいやすい。一方で車は機能性や構造に関する制約はありますが、まだスタイリングの余地があるから面白いんですよ。
機能性を突き詰めたといえば、本来、戦闘機は機能性の塊ではあるのですが、『マクロス』シリーズのバルキリーをデザインするときは、車のキャラクター性を考える時と同じロジックを持ち込んで差別化を図っているんです。

各チームのサイバーマシンの個性を描くうえで、どのような方向性で進められたのでしょうか?

河森:レギュレーション的に最低ウェイト制限を設けて、わざと重く設定しました。それによって、余剰の重量で変形機構を入れるなど、チーム独自の考え方を投入できる余地を残したんです。そこで駆け引きが生まれれば、マシンの個性が生まれますからね。

スーパーアスラーダ01のデザインは、前モデルであるアスラーダG.S.X.からイメージが大きく変わりました。その背景にはどんな理由があったのでしょうか?

河森:後半はサーキットがメインになること、まだF1ブームだったということもあって、G.S.XのGTカー風のスタイルから、フォーミュラカー風に変更することになりました。モデルは実在のF1マシンのティレルP34という6輪車で、自分も雨の富士スピードウェイ(1976年のF1世界選手権イン・ジャパン)で本物を見ている6輪車自体は他にもあるので、参考にしても許されるかなと。
前モデルであるG.S.Xから「明らかに変わった」という印象を残す意味でも、「やっぱりティレルP34でしょう」という話をした記憶があります。P34はF1が個性的だった時代のなかでも、ひと際特徴的なマシンでしたからね。

スーパーアスラーダ01は、とても強いアイデンティを持っているデザインだと感じますね。後継のAKF-11やνアスラーダ AKF-0になっても、ひと目でアスラーダだとわかるデザインが確立されています。

河森:スーパーアスラーダらしさを印象付けているのは、ヘッドライトでしょうね。サイバーマシンのデザインを行っていく過程で、あらためて車のヘッドライトは、キャラクター性に寄与するということが実感できました。
面白いもので、キャラクター性を得られるヘッドライト形状と、そうではない形状があるんですよ。理屈では説明できにくい部分がありますが、ラフを描いているなかで「これだな」と感じる瞬間がありますね。

劇中ではスーパーアスラーダ01の登場によって、他チームも類似したマシンを多く送り出して、サイバーマシンの転換点になっているのは面白いですね。

河森:そうですね。1作だけのレースものではなく、歴史まで組み込めたのは面白かったと思います。実際のレースでも、面白いのはシーズンごとのマシンの進化や変化なんです。他のチームもスーパーアスラーダ01の真似し始めて、ある時点では非常に洗練された形になるんだけど、だんだん崩れていくというプロセスも楽しかったですね。

ファンとしては、この先のサイバーマシンをもっと見たいところですね。

河森:昨年、新デザインとしてヴィジョンアスラーダを描きましたが、本当は毎年描きたいぐらい(笑)。本格的なアニメシリーズは無理でも、マシンデザインとPVをセットで展開できるとうれしいですね。

映像のCG化によってサイバーマシンも新しい進化を遂げそうですね。

河森:実はヴィジョンアスラーダは、CG化を見越してデザインしたマシンなんです。CGでは使える曲面の複雑さも変わりますし、手描きでは描きにくいマシンなんですよ。そういう意味ではまた新しいサイバーマシンの方向性を描けると思いますね。

近年の車の技術は、サイバーマシンに追い付いてきた感もありますが、新時代のサイバーマシンはさらにその先の技術が求められそうですね。

河森:そうですね。先日、サンフランシスコの街中で自動運転カーが無人で走っているのを実際に見てしまうと、本当に「現実なんだ」と思わされました。もう実証実験のレベルではなく、運転席に誰も乗っていない車が普通に街を走っているのを見ると、考えさせられますよね。
今後、自動運転がどのような発展を遂げていくかは興味深いですね。本音でいえば、気持ちのいい場所に行ったら自分で運転して、帰路は自動運転で眠りながら帰って来れるような形が理想ではないでしょうか。

究極的には河森さんご自身で実車のデザインを手掛けていただきたいです。

河森:昨年描いたアスラーダV.S.X-Rは、かなり実現可能なレベルで描いています。ショーカーとしてのコンセプトカーではなく、プロトタイプレベルぐらいのところまで詰めてデザインしているつもりです。どこかのメーカーさんが興味を持ってくれるとうれしいですね。

では最後にファンのみなさんへメッセージをお願いします。

河森:この複製原画を手に取って見ていただくと、細かな仕組みやサイバーマシン世界のロマンが伝わるかと思います。隅々まで見ていただけるとうれしいです。
あらためて過去のイラストを振り返ってみると、「若かったなぁ…」という気持ちになりますね(笑)。当時は『サイバーフォーミュラ』だけではなく、ゲームや『マクロス』シリーズも同時進行だったので、オンエア中にメカニカルイラストを描いていたことに驚かされます。ぜひこの内部図解を活かした立体物を発売して欲しいですね。

本日はありがとうございました。

メカニックデザイン 河森正治氏画像③

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